「嘘だろ‥‥」
その画像は少し加工が施されていたが
明らかに妊娠検査薬で、くっきりと陽性のラインが浮き出ている。
いつもの小さな文字は無く、泣き顔の絵文字だけが小さく書かれてある。
「ねぇ勇太…本当の事言ってよ」
「…」
「妊娠させるようなことしたんだよね」
「俺は何も覚えてないんだよ!どうしてこんなことに!」
「それはこっちのセリフだよ!」
「葉月…」
「とにかく落ち着いて。本当に妊娠したかどうか、これじゃ分からない」
「そうだよな…」
「あかねに連絡して。」
「でも…」
「いいから。はやく」
「わかった」
勇太はその場であかねに何度も電話をした。
しかし電話には出ない。
【あかね、お願い電話に出て】
【話したいことがある】
勇太はあかねにLINEを何度も送る。
しかし既読にはなるが返事がない。
おそらく勇太がこのストーリーを見たという事を分かっているはずだ。
敢えて連絡を無視しているんだろう。
パニックになっている勇太を落ち着かせ、
ひとまずあかねと連絡が取れるまでは冷静にいるよう指示をし、解散した。
私は家に帰り、自分の部屋に戻った途端、せきをきったように涙が止まらなくなった。
勇太の前では冷静を装っていたけれど、事実であればとんでもない事が起きてしまったかもしれない。
もしあかねが、あの日の出来事で本当に妊娠してしまったとすれば。
勇太とは別れることになるし、勇太とあかねとの子供が産まれてくることになるんだ。
その赤ちゃんをおろして欲しいと願ってしまう権利なんて…私には無い。
本当にあかねに勇太を奪われたんだ…
こんなに残酷で辛い事なんて経験したことが無い。
「どうしたの葉月?大丈夫?」
ベットに突っ伏して嗚咽をあげて泣いている私を心配して
姉の美月が部屋をノックし、声を掛けてきた。
「うっ…うううう、、、、。」
返事したくても、涙も止まらずもはや声にならない。
ただならぬ様子に驚き、美月が部屋に入ってくる。
「なにがあった?」
「お姉ちゃん…私…もうどうしていいかわからない…」
私は姉の美月に、彼氏が幼馴染と一晩一緒に過ごしてしまったことと
その幼馴染が妊娠したかもしれない事を話した。
そして、決定的なあの妊娠検査薬の画像を見せた。
美月はその画像を見た瞬間絶句した。
「本当に…?」
「もう、終わったよね、、、なにもかも」
美月は黙って少し何か考えている様子だった。
「さっきの画像。もう一度良く見せて」
じっと美月はその写真を見て言った。
「ねぇ。これ‥‥この子のネイルだけど…」
「…何?」
「このネイル。…私のだ。」
つづく↓
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