いつもの待ち合わせのベンチに向かう。
こんなにも重い足取りであの場所に向かう事になるなんて。
勇太は先にベンチに座り、下を向いてただ待っていた。
「待った?」
「ううん、今来たとこだから」
「そっか」
私もベンチに腰掛けた。
「葉月、ごめん、本当に」
「・・・・」
「何から話せばいいかわからないけど、とにかく会って謝りたかった」
「…あの日何があったの?」
「同窓会で、飲み過ぎたんだ。そこにあかねも居て、ぐったりした俺を介抱してくれてた」
「そうなんだ」
「で、店を追い出された時にあかねとふたりきりになって。家近いから休んでいく?って」
「それで?」
「気付いたら、裸でベットに居た」
「ホントに何も記憶ないの?」
「うん…朝起きて焦ってあかねの家をでて。そのまま帰った」
「カラオケに行ったって嘘ついたのはどうして?」
「本当の事言えば葉月が傷つくと思って」
私はふーっとため息をついた。
男女が裸でベットに居たのに何も覚えていない、ってありえるの?
「とにかく、ごめん。悲しませるような事をして」
勇太は私の目を見て言った。
「少し考えさせて。今は私も混乱してるから」
「わかった」
「あと。あかねって子とはもう連絡とらないで欲しい」
「…うん、、わかった」
しばらく沈黙が続いたがそれをかき消すように勇太が言う
「俺は葉月とはずっと一緒に居たいから。それだけは信じて」
日が暮れた空は、オレンジから徐々に紫に染まりながらふたりを包み込んでいった。
勇太はそのままバイトに向かい、私はひとり家路に着いた。
2年付き合ってきて、まさかこんなことが起こるなんて夢にも思っていなかった。
勇太が言った“ずっと一緒に居たい”という言葉が、頭の中で何度もめぐる。
…本当に?信じていいの?
美緒からLINEが来た。
【勇太、なんて言ってた?】
【本当に覚えてないって】
【まじか。ありえるの?あんな写真とられてるのに】
【それ思った】
【許した?】
【考えたいって言った】
【そっか。それがいいわ】
【あかねって子のインスタ。鍵かかってるよね】
【うん。私は見れる】
【なんかまた変なのあったら報告して】
【了解。すぐ報告する】
美緒には、あかねのインスタを監視をしてもらう事にした。
勇太が本当に何も覚えていなかったとしても。
この女はまた何か動くに違いない。
↓つづく
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